【メディア掲載】若年層に届くブランド戦略を 調査クロス、市場攻略の遅れ指摘

2018年12月5日の「アジア経財情報誌 The Daily NNA フィリピン版」にてCross Marketing (Thailand) Co., Ltd. 代表取締役濱野英和、ケーデンスフィリピンのロレンゾのインタビュー記事が掲載されました。

マーケティングリサーチを中心に事業を行うクロス・マーケティンググループ(東京都新宿区)は今年、傘下の調査会社ケーデンス・インターナショナルのフィリピン現地法人を設立した。成長市場の攻略を目指す日系企業への支援体制を強化する狙いだ。現地法人のアイリス・ロレンゾ・マネジングディレクターは、化粧品などの消費財市場で「韓国や中国企業の存在感が高まっている」と現状を指摘し、購買力が高まる若年層に照準を定めたブランド戦略の必要性を訴えている。【小故島弘善】

ケーデンス・フィリピンは、クロス・マーケティンググループ傘下のケーデンス・インターナショナルが東南アジアに展開する4カ国目の現地法人だ。ロレンゾ氏はまず、化粧品市場に話題を向け、「フィリピンは中価格帯コスメ(化粧品)が売れる時代に入っている」と指摘した。1980~90 年代の失業率が高かった時代に育った世代は化粧品への関心が低いが、2000 年代以降は、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業などの働き口が増え、若い世代の可処分所得が上昇しているためだという。

フィリピンでは実際、「韓流」コスメの人気が高い。「若年層をターゲットにしたブランド構築では、韓国メーカーが先行している」といい、化粧品ブランドを「欧米と日本=高級」「韓国=中級」「地場と中国=低級」と国別イメージに分類した。韓国系は、20 代以降の幅広い層に支持されているという。

中価格帯市場では、韓国以外のメーカーも売り込みに動いている。07 年設立の地場ビューティー・エレメンツ・ベンチャーズは、「日本品質」をうたった「コジエサン(KOJIESAN)」ブランドを展開。ロレンゾ氏によると、比較的低価格で、日本商品を信頼する消費者の心をつかんでいる。近年は、台湾系の進出も目立つという。販売価格で日本メーカーと韓国メーカーに大きな差はない中で、勝敗を分けているのは「顧客にどのように認識されるか」のイメージの違いだ。ロレンゾ氏は日系企業に対して「高級路線にこだわり過ぎている」との見方を示し、戦略転換の必要性を指摘した。

車アクセサリー市場も注目高まる

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日系メーカーの存在が大きい自動車市場でも、事業拡大の余地は大きい。フィリピンの新車販売台数は、昨年まで6年連続で2桁成長を記録。ロレンゾ氏は「車両の数が増えたことで、部品やアクセサリー市場にも活気が出てきている」と話す。渋滞中にテレビを見る車載映像機器、事故時に役立つドライブレコーダーなどが代表例。現状では、中国産のアクセサリー製品が主流だが、中価格帯以上の市場も広がっており、顧客である日本企業からの調査依頼も増えているという。

海外部門を「ケーデンス」で統一へ

クロス・マーケティンググループは、14 年にシンガポールに本拠を置くケーデンス・インターナショナルを買収。10 年代に入り、東南アジア各国の体制強化を進めている。15 年に設立したタイ法人クロス・マーケティング(タイランド)の濱野英和社長は「フィリピンには世界各国からの調査依頼の窓口になる『オペレーションセンター』も設置する予定だ」と語る。英語が公用語である強みを生かし、各国のグループ拠点と連携してサービスの質を高めるためだ。消費者調査だけでなく、企業間取引(BtoB)に関する調査事業も強化していく。

同社は今後、海外部門を「ケーデンス(Kadence)」ブランドに統一し、知名度を生かしてアジア展開を加速させる方針。既に中国法人の社名を「ケーデンスチャイナ」に変更したほか、タイ法人でも手続きを進めている。

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