【メディア掲載】タイで“売れるブランド”を目指す為に。
2018年5月号の「タイ・ASEANの今がわかるビジネス・経済情報誌ArayZ アレイズ」にてCross Marketing (Thailand) Co., Ltd. の寄稿記事が掲載されました。
このような時代背景の中、東南アジアにおける日本企業のブランド育成やマーケティング戦略は、果たして効果的に機能しているのだろうか。
総合調査企業、クロス・マーケティンググループのタイ法人で第一線に立つ5人に、“売れるブランド” づくりに必要なリサーチ活動について聞いた。
マーケティング課題の解決、目的達成の“手段”としてのリサーチ
Managing Director
濱野英和
オフィス機器の法人営業マネージャー、株式会社ネットマイルのリサーチ事業部立ち上げ、株式会社ミクシィ・リサーチの代表取締役COOを歴任。マーケティングリサーチ業界で10年以上の経験を持ち、オンラインリサーチ以外の手法や、モバイルリサーチに関する研究、サービス開発を行う。2016年度からクロス・マーケティング(タイランド)社代表に就任。
―日本ではネットリサーチを主軸事業としているクロス・マーケティング社ですが、タイ法人ではどのようなリサーチを展開されていますか?
タイでは2016年からの活動開始に伴いJupiter MR Solutions Co., Ltd.を子会社化、Shyu Co., Ltd.とは戦略的パートナー提携を交わしました。
顧客企業の業種は、食品やトイレタリーなどの日用消費財から、家電や自動車などの耐久消費財、コンドミニアムや商業施設といったデベロッパーまで幅広く、エリアもタイに限らず、東南アジア各国でのリサーチ活動を展開しています。
経験豊富なタイ人リサーチャーの現地に根ざした分析力と、日本人ならではのキメの細かい分析力を活かし、顧客企業の日本本社向けには日本語対応で。また マーケティング活動をローカライズされている現地日系企業様には、タイ語もしく英語での対応も行っています。おかげさまで、7割以上のお客様から継続的にご相談をいただけています。
― マーケティングリサーチの役割とは?
マーケティングリサーチは、ブランドのマーケティング上の課題解決や目的達成のための “手段”として、活用いただかなければなりません。
そのためには、ブランドの“立ち位置” および“マーケティング上の課題”が、現状どこにあるのかを正確に把握することが不可欠です。こういった理解を深めることが、結果的にマーケティング戦略立案時での “手段”として、効果的なマーケティングリサーチの提案や分析につながると考えています。だからこそ、マーケティングリサーチの提供にとどまらず、場合によってはブランドの課題発見などのお手伝いもさせていただいています。
売れるブランドを目指すお客様の良きパートナーとなれるよう、リサーチ結果をどのようにマーケティング課題解決に結びつけていけば良いのか、東南アジア市場とそこに生活する消費者の動向や嗜好に、日々アンテナを張り巡らせています。
顧客企業のシーズと、消費者ニーズの橋渡し
Shyu Co., Ltd. President
若山 修
タイ在住18年。マーケティングコンサルティングとリサーチでは30年以上の経験を持つ。大手広告代理店のマーケティングプランナーを経て、タイでShyu Co., Ltd.を起業し16年目。現在はShyu Co., Ltd. の代表とCross Marketing (Thailand) Co., Ltd.の役員を務める。
ブランドマーケティングのスペシャリスト。
―東南アジアで成功しているブランド、苦戦しているブランドの違いとは?
ブランドのマーケティング戦略立案および推進を日本主導で行うケースと、現地主導で行うケースがありますが、日本と現地双方のバランスよくとって推進している企業では、 成功している割合が高いように思います。
一方で、マーケティング戦略は日本主導、現地は日本で意思決定された戦略に即して販売活動のみを行っている、あるいは逆に、すべて現地主導で行っている場合などは、苦戦を強いられているケースが多く見受けられます。
―効果的なブランディングに必要な要素とは?
まずは、現地の消費者ニーズを正確に把握することが先決となります。正確なニーズの把握には、その国に根ざした消費者の価値観や倫理観、嗜好傾向などの背景要因の理解も大切です。こうした深い消費者ニーズの理解を基に、日本発のブランドが保有している数多くの強みの中で、何が現地消費者にはささりやすく、何はささりにくいかをその理由も含めて整理していくことが、効果的なブランディングにつながると思っています。
その中でのマーケティングリサーチの役割は、企業のシーズと消費者ニーズの論理的な橋渡しにあると考えています。そのような考えを元に、日々顧客企業のサポートを行っています。
消費者心理を掴む
Shyu Co., Ltd. Managing Director
Sudarat Vacharanopvipa (LUCK)
30年以上マーケティングリサーチ領域に携わり、消費財、ヘルスケア、IT、音響機器、自動車など多岐に渡る分野を手掛ける。特に定性調査の知見が豊富で、タイにおけるモデレータの育成も手がけている。大手広告代理店、調査会社数社を経て、現在はShyu Co., Ltd.とCross Marketing (Thailand) Co., Ltd.の役員を務める。
―日本企業のタイ市場に参入でのポイントは?
日本で成功した商品やサービスをタイで展開しようという企業は、日本での成功体験を背負ってタイに来られます。もちろんそれ自体は素晴らしいことなのですが、日本で成功したコンセプトがタイでそのまま通じるとは限りません。文化も考え方も異なる現地のニーズに、どのようにフィットさせるかを考えることが大切です。
―現地のニーズを知る方法とは?
定性調査では、消費者の価値観や情緒的な心理を構造的に把握することが有効です。そういうことが把握できれば、おのずと現地の消費者ニーズ、あるいは、日本人消費者のニーズとの共通点、相違点が理解できると考えています。
―タイにおける日本企業のブランド戦略に足りない要素とは?
「柔軟な発想」ではないでしょうか。先ほども申し上げましたが、日本の企業は自社ブランドに対する想いがとても強い傾向にあると思います。一方で、そのことが現地の意見を受け入れ、新しく試みることへの足かせになってしまっている部分もあると感じています。自社ブランドの基幹コンセプトを守りつつ、現地にフィットさせるべく「柔軟な発想」も取り入れれば、現地で消費者に愛されるブランドを育てることができるのではないでしょうか。
時代の変化に沿ったマーケティングが重要
Associate Director
Kajornkiat Kiatsunthorn (POM)
大手グローバル系リサーチ会社にて10年以上のキャリアを持ち、多くのプロジェクトを担当。中でも経験者が少ない医療/ヘルスケア領域のリサーチにも精通している。消費財・小売店・商業施設などの事業戦略コンサルティング会社にて企業サポートの実績も多数。リサーチの企画からモデレーション、分析まで専門分野は幅広い。
―タイで需要の高まりが予想される、高齢者向け市場参入へのポイントとは?
少子高齢化が進むタイでは、約10年後には日本同様の本格的な高齢化社会がやってくると試算されており、高齢者向けの商品やサービスに注目が集まっています。市場でも加齢時におけるクオリティ・オブ・ライフへの欲求は高まっており、家電や服、靴などは高齢者にも使いやすい、ユニバーサルなデザインが商品開発の鍵になるのではないかと予想しています。
このように時代の変化を素早く的確に捉え、消費者行動やその背景要因となる消費者心理を把握していくことが、今後のマーケティング活動には大切です。
―今後のブランディング、マーケティング戦略に必要な視点は?
テクノロジーの進化により、消費者はひとつものを買うだけでも容易に短時間に大量の情報を自ら集めることができる時代になりました。従来型マス広告の価値は明らかに落ちてきています。また購買チャネルも店頭からEコマースまで多様化してきており、消費者のライフスタイルの多様化にチャネルが対応してきています。タイ人は今も商品を直接見て、触れられるリアルな機会を求めていますが、購入はインターネット上で価格比較して最も安いEコマースサイトを利用するといった人が増加中です。
販売者側には、このパワフルなデジタルテクノロジーをマネジメントする力が求められると考えています。
現地の文化、生活実態から消費者ニーズを的確に理解する
Account Supervisor – Client Service
山川哲史
建設機械の部品営業、クロス・マーケティンググループでの日本国内営業を経て、2016年よりタイ赴任。日系企業の日本からの進出時や、現地で抱える課題に対して、調査でのサポートを行っている。タイのみならず、ベトナムやミャンマーなど周辺国における現地調査のコーディネートなども担当。
―消費市場としてのタイ周辺国の事情は?
近年、経済成長率が著しいベトナム、フィリピン、ミャンマーの市場に注目しています。私自身、現地に出向くと消費の活性化を肌で感じます。
この3ヵ国に共通して言えるのは、購買チャネルがまだそれほど多様化していないこと、消費者の商品の購入場所がトラディショナルトレードに偏っていることなどです。そのため市場に数多く出回っている、ノンブランドの中国製などの安価な商品を購入する消費者が多いです。
一方でデジタル環境は急速に進んでおり、消費者は最新のブランド情報をSNSなどを通じて手軽かつ迅速に入手できる環境にあることから、市場にある商品と欲しいブランドのギャップが大きくなってきているようです。このような状況を鑑みると、日本のブランドにも大きな機会があるのではないでしょうか。
―日本と東南アジアにおけるリサーチの違いとは?
日本において日本人をターゲットとしてマーケティング活動を展開する場合、リサーチに頼ることなく生活者のライフスタイル、価値観などを把握できる部分は多いと思います。これが東南アジア地域となると、特に初期のマーケティング戦略立案時にはこのような基本的な情報について、リサーチ活動を通じて客観的に把握していくことが大切です。
現地へ足を運び、生活者や市場の現状を肌で感じてもらえるよう、現地に同行のうえご案内もさせていただいています。