【タイを知る】タイの特許・商標(第16回)

今回のテーマは少し硬めのテーマ「タイの特許事情」です。JETRO及びタイ国家統計局提供の2007年から10年間のデータをもとに審査機関、出願国内訳、侵害訴訟、商標登録状況などをまとめてみました。

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タイは、2009年一度の国際特許出願により複数国で同時に特許保護を求められる「特許協力条約(PCT)」に加盟しました。以降、日本からの出願は増え続け、2015年には、タイの総出願件数のうち約3割を日本からの出願が占めています。10年を超える審査期間の長さが問題視されていましたが、2014年からは「特許審査ハイウェイ(PPT)※」の試行が始まり、審査期間が短縮されたので、今後も日本からの出願・登録が大きな割合をしめることが予想されます。
※各特許庁間の取り決めに基づき、第1庁(先行庁)で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請により、第2庁(後続庁)において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組み。

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日本からの特許出願が多いということは、日本の特許権者が訴訟に巻き込まれる可能性も高いと推測されます。しかし、侵害訴訟の別を見ると、「商標」と「著作権侵害」が訴訟の大半を占めており、「特許権」の侵害は1%にとどまります。模倣品や海賊版の蔓延はタイ国内のみならず貿易上でも深刻な問題であり、2007年に署名された「経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定(日タイ経済連携協定(EPA)」では商標権・著作権の侵害物品に対する国境措置の強化と罰則対象の拡大が定められています。

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商標の登録状況を見てみると、2007年から2016年までの10年間でタイ在国民による出願は約1.8倍に増加し、権利意識の向上が見られます。2016年時点で国外からの出願は在住者の1/3程度に留まりますが、2017年にタイがマドリットプロトコルに加盟したことで、商標を国際登録していれば、出願時に指定していなくても事後指定でタイでの商標登録ができるようになりました。これにより、2018年以降は国外からの出願・登録件数の大幅な増加が予想されます。