日系老舗スイーツメーカーの東南アジア進出前調査事例
東南アジア進出の成功の鍵は「食後の口直し」にあり
東南アジア4カ国のスイーツ消費実態から探る、日本ブランドの勝機。
日本国内で確固たる地位を築いた日系老舗スイーツメーカーが、次なる成長の舞台として海外を目指す。しかし、文化や習慣が異なる海外市場で成功を収めるには、現地の消費者を深く、正しく理解することが不可欠です。
本ケーススタディでは、日本の著名なスイーツメーカー様が、初の海外進出先として東南アジア市場を検討するにあたり実施した、消費者インサイト調査の事例をご紹介します。
クライアントの課題
日本国内での成功と、海外進出への高い壁。
長年にわたり高品質なデザートを提供し、日本国内で知らない人はいないほどの知名度を誇るクライアント。
しかし、今後の国内市場は人口減少により縮小が見込まれており、持続的な成長のためには海外市場への進出が不可欠な経営課題となっていました。
中でも、経済成長が著しい東南アジアは最有力候補でしたが、下記のような課題を抱えていました。
東南アジアの知見の欠如
クライアントはこれまで海外事業の経験がなく、東南アジアの消費者がどのようなスイーツを、どのように楽しんでいるのか、全く知見がない状態。
多様性への懸念
「東南アジア」と一括りにできない、国ごとの経済レベル、宗教、文化、食習慣の違いをどう捉え、戦略に落とし込むべきか分からない。
戦略の不透明さ
東南アジアのどの国を最初のターゲットにすべきか、どのような商品を投入すべきか、判断の根拠となる情報が不足している。
アプローチ「多様性を捉えるための4カ国比較FGI」
私たちケーデンスは、東南アジアの中でも市場の特性が異なるタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピンの4カ国を対象とした調査をクライアントに提案。
各国の消費者のリアルな声(肉声)を収集し、その背景にある文化や価値観までを深く理解するため、フォーカスグループインタビュー(FGI)を実施しました。
各グループでは、実際にデザートを試食してもらいながら、日常の食生活、スイーツを食べるシーン、味の好み、健康への意識、そして日本の商品に対するイメージなど、多岐にわたるテーマで議論を深めました。
発見「東南アジアの消費者を動かす、リアルなインサイト」
東南アジア現地での調査と分析から、今後のマーケティング戦略の核となる、数多くの重要なインサイトが明らかになりました。
「スイーツ愛」は万国共通。でも、好みと呼び名は国それぞれ。
東南アジアの消費者にとって、デザートやスイーツは日常に欠かせない楽しみであることが改めて確認されました。一方で、人気のカテゴリーは国ごとに異なり、同じような冷たいデザートでも国によって呼び方や認識が異なるなど、国ごとの細やかな理解の重要性が浮き彫りになりました。
例:タイでは伝統菓子、シンガポールでは洗練された洋菓子
「ヘルシーでありたい」という建前と「甘いものはやめられない」という本音。 多くの参加者が「健康には気を使っている」と口にしながらも、その後の会話では「でも、甘いものは別腹」「ストレス解消にスイーツは欠かせない」といった本音が語られました。この「罪悪感と幸福感の共存」は、プロモーションにおける重要なヒントとなります。
最大の商機は「味の濃い食事の後の、口直し」。東南アジア 4カ国共通で頻繁に聞かれたのが「スパイシーで味の濃い食事の後に、さっぱりとしたもので口の中をリフレッシュしたい」というニーズです。そして、フルーツやアイスクリームがその役割を担っていることが判明しました。
この「口直し」という消費シーンは、日本のメーカーが持つ「繊細でさっぱりとした甘さ」という強みを活かせる、絶好の機会であることが示唆されていました。
結論「データに基づいた、海外進出への確かな一歩」
今回の調査を通じて、クライアントは漠然としていた東南アジア市場を、解像度高く理解することができました。東南アジア各国に共通するインサイトと、国ごとの違いを明確に把握したことで「どの国から、どのようなコンセプトの商品で、どうアプローチすべきか」という具体的な戦略立案への道筋が拓けました。
「食後の口直し」という明確なターゲットシーンを発見したことは、商品開発からコミュニケーション戦略まで、一貫したストーリーを構築する上での強力な羅針盤となるでしょう。
私たちは、このインサイトを基にした具体的なマーケティング戦略の策定を引き続きご支援しています。