タイ現地生産から販売までを行う日系飲料メーカーの製品開発事例

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成功の鍵は味覚の完全ローカライズにあり。調査と改善を繰り返し、タイの健康志向層を捉えたRTD飲料開発ストーリー

日本で親しまれている味が、そのまま海外で受け入れられるとは限らない。特に、繊細な味覚が求められる飲料市場への挑戦は、現地の嗜好をデータに基づいて精密に理解することが成功の絶対条件です。

本ケーススタディでは、日系飲料メーカー様がタイ市場で「機能性飲料(RTD飲料)」という新カテゴリーの創造に挑んだ際の、徹底した消費者調査と商品開発の事例をご紹介します。

クライアントの課題:日本の成功体験は、タイで通用するのか?

クライアントは、日本国内ではコンビニエンスストアの定番商品として知られる健康志向の機能性飲料を持つ大手メーカーです。しかし、将来的な国内市場の縮小を見据え、成長著しいタイ市場への進出を決定しました。
しかし、クライアントは、タイ市場への進出が決定したその一方で、大きな不安を抱えてもいました。

味覚の壁

そもそもタイの消費者に「健康志向」は存在するのか。日本の商品をベースにした味が受け入れられるのか、クライアントにとってこれらは全くの未知数。

カテゴリーの壁

タイ市場にまだない「機能性飲料」という新しい概念を消費者に理解してもらい、購入してもらうことはできるのか。

戦略の不確実性

タイ現地で生産するにあたり、どのような味覚(甘さ、酸味、後味、香り)を目指すべきか、確固たる指針がなかった。

アプローチ:味覚の「正解」を導き出す、反復型の会場調査

私たちケーデンスは、タイの消費者が求める味覚の「正解」を科学的に導き出すため「数百人規模の会場調査(CLT)」を提案、実施しました。
この調査の成功の鍵は、その「徹底した管理」と「反復性」にあります。

厳格な環境管理

全ての参加者が同じ条件で評価できるよう、飲料の温度、試飲の量、提供する順番、口直しの水に至るまで、あらゆる要素を厳密に管理しました。

反復的な開発プロセス

CLTでは、1回の調査で結論を出すのではなく、【調査で課題を発見 → 商品の試作品を改善 → 再び調査で評価】というサイクルを何度も繰り返しました。これにより、徐々に味の精度を高め、ターゲットが求める理想の味覚へと近づけていくことができました。

発見と成果:タイの健康志向層に響いた「黄金バランス」の発見

そして、この執念ともいえる調査と改善のプロセスは、明確な成果となって表れました。
膨大な試飲データから、タイの消費者が求める味覚の輪郭が浮かび上がりました。

それは「日本のオリジナル製品よりも後味をすっきりとさせつつ、ほんのりとした甘さを感じさせ、リフレッシュできる心地よい微炭酸を加える」という、絶妙なバランスでした。

新カテゴリーへの確かな手応え

この「黄金バランス」を実現した最終試作品は、ターゲットとして定めた健康志向の消費者グループから極めて高い評価を獲得。「これなら毎日飲みたい」「新しい感覚で美味しい」という声が多数挙がり、「機能性飲料」という新カテゴリーが受け入れられる確かな手応えを得ました。

タイ市場参入への成功の足がかり

このタイ現地調査結果に基づいて完成した商品は、タイ市場で正式に発売されました。
結果、事前の狙い通り、新しいものや健康に関心が高い層を中心に初期のファンを獲得することに成功。今後のマス市場へ向けたサクセスストーリーの、まさに第一歩を築くことができました。

結論:新市場の扉を開く「徹底したローカライズ」

本事例は、海外市場で新商品を成功させるためには、自社の思い込みや過去の成功体験を一度リセットし、現地の消費者の声をデータに基づいて忠実に製品へ反映させる「徹底したローカライズ」がいかに重要であるかを証明しています。まずはニッチでも確実に響く層を捉え、そこを基点に市場を広げていく。この着実なアプローチが、未知の市場への挑戦を成功へと導くのです。